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其の十四:ジャンプするアイデア

秋山:アトリエにいろんなものがあります。この石。石ひとつが何を語るのか。ということを考えてみましょう。

福井:ほう!

秋山:例えば、この石は世界最南端のケープタウン喜望峰)で拾ったものです。 その場に立ってみると喜望峰ではなく、絶望峰と言った方が的確だと感じました。あまりにも荒れるので、昔は「嵐の岬」と呼ばれていたそうです。 石を拾ったその日は2001年9月10日、アメリカのNYで「9・11」があった前日だったのです。 翌日、ヨハネスブルグに行こうと空港に行くと、人はほとんどいなく、飛行機も飛ばす、次の飛行機で行ったのです。拾ってきた石からわかるのですが、最南端ですから、貝殻と石の浜でした。たかが石ですけれども、じっくり見ると奥深い必然性を見るような気がします。

福井:ほう。

秋山:このサハラ砂漠の砂を見てると、石川啄木の「一握の砂」*詩を思い浮かべるんです。ぼくにとっては、サハラ砂漠の砂と啄木の砂と同じテーブルに置くと、その関係は飛躍するようなアイデアが生まれるんです。それはジャンプするようなアイデアにつながるのではないでしょうか。

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福井:最初に先生がおっしゃっていた速読なんてなくて、行間が大事という話に近いことかなと思います。その時の風景だったり、その時の気持ちに戻るためのタイムマシンツールといったところですね。

秋山:そうそう。コレクションしたいなんて思ってないけど、これをどうしても持って帰らないとぼくの心が許さない。そういう感じがするんです。ぼくの人生の中はそういう欲望が結構深いんですね。例えば、これとかもうしょうがない。ただの拾った太い枝です。しかし、そこに、ここにいる理由の単語を書き始める事によって、どこにでも落ちている枝ではなくて、記憶を呼び覚ます力の記録媒体に変化するんですね。

福井:アッハハハハ!凄いなあ。

秋山:木に描く。原始人のように描いていくんです。1993年、えーと、エコアートの展覧会をサンフランシスコでやった時に、残さなければいけないと思って書いたんです。あと賞状も自分で作るときがあります。もらった賞状が気に食わない時は、自分で木を拾ってきて、デザインをして、文字を書き、審査委員たちのサインをもらい、新しい世界で一つしかない賞状を作ったのです。いつも何か真実感のある発見をして、それを形にしたいと思っているからでしょうか。

福井:先生と喋ってて、分かるのは、確実にいろんなところに飛んでるなということですね。だからもう、話がもう・・・いくらでも出てくるじゃないですか。僕もずっとそれで困ってたんですけど。人としゃべりながら・・・飛んでしまうんです(笑)もう聴こえなくなる(笑)

秋山:そう!「銀の匙」という有名な本があるんです。

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灘高という有名な高校があるんですが、その灘高の国語の先生「橋本武」さんがまだ灘高が出来たてほやほやの頃に、教科書を使わず3年間かけて中勘助の『銀の匙』を一冊読むという授業をやっていた。「銀の匙」だけで三年間。その先生は一行ずつ読んで教えるんだけれど、話が飛んじゃって飛んじゃって飛びっぱなしで。灘高の生徒が優秀だったこともあるんだろうけど、教え子たちが東大の総長になったり、企業の立派な役職についたりすることが多かった。僕はそう思ったら、横道に逸れていくことほど創造的だというふうに感じたんです。横道に逸れるほど、新しい組み合わせが考えられる。あっちこっち飛んで飛んで、また元に戻ってくるような思考回路は非常に重要で、クリエイティブの大切な回路です。だからぼくは話が飛ぶことは凄くいいことだなと思っています。

福井:そのポイントがどこに繋がるかが分からないんですが・・・

秋山:今言った、アイデアが飛んでいったりして何が一番いい組み合わせか、最高、ベストな組み合わせは何か、と毎日考える。ベスト・カップルを探すんです。でもなかなか出来ないんですけど。

福井:まあ、そこがなかなか出来ないからこそ、学問になってないというところが重要で・・・

秋山:そうです。でも今みたいな話がどんどん進んできて、誰もが「あ、それは当然だよ」と言った瞬間に学問になります。

福井:ふーむ。今回はちょっとだけそこに辿り着きかけている・・・


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