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其の十:小さな美意識からアイデアは生まれる

秋山:集中、いいこと言いますね。集中ということが最も重要なんです。ぼくたちは考えるとき、集中力と呼びます。心を集中する。そうすると、無かった力が湧いて出てくるんです。これがアイデアのひらめきっていうことになる。だから科学者もアーティストも経営者も、優秀な人はみんな物凄く集中力があって、とことん最後まで、答えを見つけるため、集中する力が大事なんです。まあ、さっきの美の話が終わってないんですけど・・・。

福井:あはははは。(笑)

秋山:そうそう!人生は美しくありたい、死ぬときは。

福井:ああ、死ぬ時の・・・

秋山:そりゃ、幸福に死にたいとは言わない。その裏側はお父さんのお爺さんの美意識、そのお爺さんは弱点がいっぱいありました。でも死ぬときになったら、うちのお爺さんはこうでした、と子供たちに言われたいんです。

福井:はい。

秋山:子供たちは、そりゃ何も口にはしないけれど、分かっている。阿吽の呼吸、つまり以心伝心が必要なんです。だから以心伝心という言葉が最高にいいのは、一言も説明しない。これが以心伝心の「伝心」の大事なところなんです。

福井:なるほど。

秋山:何にも説明しない。でも遠くにいても、あっちこっちにいても、十年も会わなくても、心はいつも以心伝心している。若いころに会った同級生、あいつ元気にしてるかなあっと。時々思いますよね。向こうも思っているんですね。

福井:ああ!なるほど。

秋山:親友だったりね。歳を取ると小さいころの親友が・・・福井さんはまだそういうのは無いと思うけれど、小さい頃の親友が死んでいく。知らせが来るとき、ああっ!って、もう振り返って、親友の人生をずーっとこう辿っていって、それが寂びだとか、侘びだとか、幽玄だとかいうものかもしれないけれど、それが美なんです。美の心。ここがないと、人間は道徳も出来ないし、浅はかになっていくんです。最後の拠り所は美なんです。

福井:うーん。

秋山:塵やごみが落ちていて、それが汚れていて嫌だと思ったら、誰にも言われなくても、さっと拾いますよね。それはみんなが心地よく過ごしたいということを、意識出来る思考があるから。別に自分の為だけにやっているわけじゃない。私自身もそうだけど。答えが欲しくって・・・じゃあこれでおこづかいがもらえる・・・だからやる。そういうものではないんですよね。掃除されている方を遠くから見た瞬間に「あっ、あの人いい人だな」と思うんです。そういえば、僕の事務所でもそんなことがあって・・・事務所にもそんな人がいるようで、10人くらいいると洗面所や手洗いが知らぬうちに、凄く綺麗になっているんです。仕事を終えて、最後に僕が部屋を出るまで誰が掃除をしたかのか分からない。絶対誰かがやってる筈なんだけど。でも聞けませんよね。スタッフに聞いたら答えが出るんだけど・・・

福井:聞いたらいいじゃないですか(笑)でも、それいいですね。

秋山:いや、そういうものだから。例えば庭掃除にしても、僕の家の前まで掃いてくれる人がいるわけ。誰だろう?誰だろう?って。

福井:それは自分の家でなくても出来る人がいますからねえ。

秋山:うん、いますね。あっ、こないだね、ぼくは財布を拾ったんです。どかっとした財布ですよ。女房がここにいっぱいお金が入っているって。ちょっと見たら、若い人のIDカードが入っている。「あ、若い人だね。給料日後かな。どっかにいくのかな」なんて、想像が膨らむわけ(笑)そしたら、これはきっと早く、探しているんだろうね、サラリーマンだね、月給いくらだろう?なんてまた推測するわけ(笑)それを早く交番に届けるのが一番だと。

そして交番で、何を言われたかっていうと。「拾った人からの一割の謝礼をあなたは欲しいですか?」って。もらっている人もいるわけです。だって大きなお金、一億円拾ったら分配金をもらいたいですよね。みんなそう思うんです。でもそこで欲しいと言ったら、「俺の美が消える」(笑)

福井:そこにつながるための財布を拾った話だったというのに、今気付きました(笑)

秋山:例えばね、そういうことも小さな美意識だから。それが社会を良くしていくための・・・例えば一輪の花を玄関に挿しておくのは自分が見るためじゃなくて他人に観てもらうためであったり、そういうことが重要だと思うんです。美がね、いつでもどこでも最終的にはあるだろうなと思います。

福井:先生がちょっと意識され出しているからこそ見えている、とかないですか?

秋山:あ~、そうですね、なかなか分からないからね。何に感動するかだよね。心が動くということが最も重要です。心を動かす話も、心を動かすことも、僕はいつも考えないといけないなと思うんです。

福井:ああ!それはそうですね。

秋山:そうしないと子供たちを教えたり、若い人たちを教えたりするというのは・・・最終的にはそういう基準があって。たとえば美術館*を作ったって入場料を一円も取らない。作品は全部町に寄付すると決めているんです。30代と40代で作った僕の作品は全部寄贈すると。町の人の為に。

福井:それは奥様には言わなくて大丈夫ですか?

秋山:いやー言いましたよ。そりゃ、怒りました(笑)

福井:あっはっはっは。

秋山:言う前にもう取りに来て。女房がこれはあげないでねっと言ったのは・・・うちの娘が子供のときにお雛様を作ったんです。お雛様・・・僕の伯父が二人の娘のために持ってきてくれたわけ。そうしたら「いやあ、違う。このお雛様は何とか堂が作ったお雛様・・・何か嫌だ。俺はものづくりだ!」と。すぐ「スズメ雛」を自分で彫ったんです。

福井:ほう!

秋山:男雛と女雛を彫って、「スズメ雛」を作って、置いておいたんです。 で子供が家に帰って「ああ!」って、で、よそのおうちに行ったら「うちのお雛様は違う!」っとなったんです(笑)

福井:まあまあ、贅沢な話なんですけどね。お父さんが作ってくれたってこと自体は。

秋山:贅沢だけどね。そうそう!「そのお雛様をあげるのか?私(女房)に無断で」と。

福井:それは作品なのか、思い出の品なのかっていうことですよね。

秋山:そういうものはあるんだというふうに言って、僕は・・・何年後かに後悔しましたけどね。(笑)

福井:後からしか気付かないんですよね。

秋山:気付かないんだよね、幼稚だからさ。はっはっは!

福井:だからこそ常に駆け引き無く接してあげるというのは、凄く嬉しいですね。

秋山:そのお雛様は戻してほしいって女房が言うんだけど、俺、嘘を付けないから。勘弁してくれって謝って、平謝り。いつか展示されるから、その時はみんなで観に行けばいいやって。

福井:お金には代えられないことですから。

秋山:僕が死に、あなたが死に、子供がいて、孫がいて、孫が「何、この汚いの」ってゴミとして捨てたら終わっちゃうじゃない。

福井:まあまあ・・・終わっちゃいますが、それは気付くでしょうけど。

秋山:孫がそういうふうなかたちで展示を観に行く。そういうのは代々繋がっていながら、いずれは消えていくんですよね。

福井:まあ僕も参考にはさせていただきたいんで。実際、僕が研究しているものって、お金を稼ごうっていうよりは、このメソッドをうまく後世に残して行くことを考えてます。


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