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其の八:発見!アイデア方程式って何?

福井:先生のイラストの何が他のイラストレーターと違うのかな?ということを考えたんですけれども。先生のイラストというのは、本当は絵で描けないものを描いている。そこが違うんだというのがまず一つ。そして描けないものがあるっていうことは何なんだろうということを考えると・・・。

これが先生のイラストで(タブレットの画面を見せて)、こんなかたちで実際に辞書を作っているわけです。例えば、「ヒラメキ」っていっても、どういう絵で描くんだろうと考えたときに、「パッ」と点くというイメージから来るので、電球のイラストの話になるわけです。先生の描く殆どのイラストは概念なんだなっていうことに気がついたんです。アイデアについて描いているんじゃなくて、概念を現す為に動物であったり、鳥であったり、ヒトをここに登場させている。

そしてこの概念をイラストにしているイラストレーターと何かモノを擬人化する、もしくは動物としてのキャラクターを作る、そういうイラストも確かにあると思うんですけれど、それとは全く違うといいますか、「イラスト化」するということでなく、見えていないものをイラストにされているっていうことが、「あっ、だからアイデアが先生の作品からは感じられるんだ」というのが、僕にとっての一番の衝撃だったんです。

例えばこの「大食い」ですけれど、大食いっていうことはアイデアじゃなくて概念ですよね。僕が今その凄く注目しているのが「概念」という考え方で、概念というものは形では表せない、現す為には何かを借りないといけない。ここで大食いのイラストを説明すると、大食いという概念をワニが寿司を一気に食べている様子を描くことで表している。つまりアイデアを形にしないと、アイデアは表現できない。

これが一番最初の話に戻るんですけれど、アイデアが出来る時っていうのは、アイデアと掛け合わせるのが必ず概念でしかない。さっきの「カメラ」というアイデアではなくて、実は頭の中で「写真撮影機能」という概念を前に付けている。この概念とアイデアを組み合わさないといけないのに、みんな概念であるべき部分にアイデアを組み合わせてしまって、非常に複雑なものになってしまう。それは実はアイデアじゃない。この発見が僕からすると衝撃的な発見で、これが実際公式で表されるとこういう感じなのかなと・・・(ノートを見せて)

この概念のn乗というのは、概念というのは幾つもの項目に繋がるもので、例えば大きさ、形というものもありますし、例えば無料とか有料、中古とかそういった概念なんだけどそれ自体には意味はあっても形はないものが世の中にはたくさんあって、その概念の組み合わせ、アイデアと違うこの概念というものはたくさんある。でもここで組み合わされる最後のアイデアの花っていうのは、先生の場合は必ずイラストだったら、イラストにしかならないし、ポスターはポスターというアイデアにしか絶対ならないんです。じゃ、携帯電話を作っている人は、何を組み合わせても携帯電話しか絶対に出てこない。

 

ひょっとすると、ここの最後に掛けるアイデアの花っていうのは、先に決まっている筈だと。先にこれが決まっていて、それに様々な概念を組み合わせる。この概念というのは、あらゆるものを分解したときに、それ自体も概念とアイデアに分かれて、アイデアのほうじゃなくて、さっきの例でいくとメガマックのメガっていう「巨大である、大規模である」っていう概念だけを、取ってきて組み合わせているということなんだなと。それがこの方程式なんです。

 

この理論っていうのは、僕はずっと5歳の時から公文式をやってきて、一番好きな算数が因数分解だったんですね。あの美しさ、解を導き出す美しさがとても気持ちよくて、その因数分解で導き出された答えというのが、まさに今アイデアを何でもかんでも分解してみたいな、そうすると解が出るだろうという、そこが一番面白いところ。そして新たに組み合わせたらアイデアが出るという発見をひたすら繰り返しているところなんです。せっかくなんでその続きを全部言ってしまっても良いでしょうか?(笑)

秋山:そうですね。

福井:イラストとデッサンとはそもそも何が違うのかなって、こういうアイデアがひらめく話からこないと僕には全く分からなかったんですけれど、見たものを描く能力と、見えていないものを描く能力とは全く違うものなんだなと。実際、僕が新しいアイデアを考える時っていうのは、見えているわけではないので、こんなふうなサービスがあるといいな、というのをゼロから創る。その大変さを知っているので、先生にもある程度僕の苦しみを分かっていただけるのかと思うんですが。

秋山:ええ。

福井:もうひとつがポスターって何なんだろう、ということを改めて考えてみると、これなんですが(ノートを見せる)。

何が違うのかっていうと・・・概念はメッセージというものになって、どうしても必要なのが情報ということで、情報が無ければただの絵画。でもそこにイラスト、日付がある、何らかの伝えるべきメッセージが必ず存在するので、大抵のケースで文字があるんです。

その組み合わせのバランスを、先生の場合は空白が多いわけですけど、その部分にデザインされた文字が入れられているわけです。このことに気付くことが出来るだけでも、この考え方は面白いじゃないかと・・・・・いう話を先生にするのが非常に怖かったんです。(笑)

秋山:アハハハ!(笑)そうですか?

福井:「美大の先生に何を言っとるねん」と。(笑)

秋山:こういうふうに最初から整理整頓して言ってもらえると、ああ、その通りですと、本当にその通りだなって思いますね。普通はここまで分析出来る人はいなくて、よく見ないで語る人もいるんですが、よく分析されていてそのまんまですよ。

福井:ありがとうございます。

秋山:見えていないものを描く。これが僕の一番重要なテーマです。それと人は見えていないものを描いたものを見て、見えていないものを見えているように錯覚してもらうことが重要だと思っているんです。そしてそこに文字があって想像力を膨らませてもらう、そういうようなものをイラストレーションとして僕は大事なものだと考えています。


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