秋山:広告代理店のジェームス・W・ヤングという人物がいるんです。1886年に生まれて1973年に亡くなっています。アメリカ最大の広告代理店トンプソン社の常任最高顧問、アメリカ広告代理業協会(4A)の会長等を歴任し、広告審議会(AC)の設立者で元チェアマンだった人です。
その人がアイデアに関する話をしているんです。ぼくはこの本を若い頃に読んだんです。アイデアの組み合わせを、科学的に組み変えているのですごいと思いました。
それに対してぼくのアイデアの出し方は感覚的で、ピリピリとしています。絵で描かなきゃいけない仕事をしているから、日常生活を見て「これは描けるか?」と常に観察し、考えるんです。普通なら描けないですよ絶対。でもぼくは描けるんだという。そういう点に関しては敏感に反応するんです。でもそれをするには、若いときから目のトレーニングをしないといけないんです。じゃないと決して見えてこないんです。
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でも政治家はそういった努力から生まれたアイデアを利用し、組み替え、別なものにしてしまうときがある。たとえば、日本とアメリカの第二次大戦中も、アイデアのある人たちを呼んで、自分たちではできない暗号等を数学者たちに解かせて、別利用しました。
何かに研ぎ澄まされた人たちや、特化した能力を持っている人は、必ずどこかに落ち度があるんです。そこを見抜いて「国家の大事のため」と言って刺激し、利用する。そうすると、数学者等は特別な頭脳を持っているにもかかわらず、一般常識が欠けていたりするために、そういう暗号をすごく頑張って解いてしまう。その結果、アメリカが日本の暗号を全て解読して、多くの人が亡くなってしまった。それって腹立たしいですよね。利用されているわけですから。
原子力だって利用されているわけじゃないですか。そこでぼくたちが何をしないといけないかというと、そういうことをさせないためのアイデアを考えないといけないと思うんです。
福井:ああ、させないためのアイデアですか。
秋山:そう。僕の故郷長岡の信濃川の土手周辺で、1945年7月20日に模擬原子爆弾が投下された場所があります。それによって農作業をしていた四名が亡くなって、五名の負傷者が出ました。原子爆弾もどきを落としても人は死んじゃうんだから恐ろしいですよね。
ぼくらはそれを実感して、深く考えることをしないと、アインシュタインのような「優秀な」物理学者たちみたいに利用されてしまうんです。ヒラメクアイデアはどういうところに出さないといけないかというと、そういうことをやらせないためのアイデアを示すべき場所に出さないといけないと思うんです。
アイデアには目的が大事で、その目的が明解で正しいものであれば、それは良いアイデアのヒラメキになるし、間違って悪い目的になってしまえば、それを利用する人間の利益になってしまうから、絶対に間違ってはいけないんです。
福井:先生がおっしゃっているように、社会をよくしたり、平和につながる、まあさっきの戦争につながらないことも重要でしょうし。
秋山:うん。それはすごく重要だと思うんです。これをアイデアのヒラメキの問題点にして行きたくて、そう考えているうちに気が付いたんだけど、ヒラメキの目的に触れていなかった。
ヒラメキは誰にでも生まれるわけですよね。いいヒラメキに対して、いい活用のヒラメキが重要だと思うんです。
また表現するときに嘘をついちゃいけないとも思います。ぼく本を書いているんですけど、嘘はつかないよう心がけているんです。自分の書いた文章を見て、嘘が書いてないかを良く見直すんです。「これは嘘だな、いい加減な言葉だな」という言葉は、使ってはいけないと思うんです。なぜならそこに真実感がないから。そうでないといいアイデアは絶対出ません。
福井:ああ、そうですね。絵だけでなく、文章も絶対にご自身で書かれるんですか?
秋山:もちろん。一字一句、全部自分の責任じゃないですか。人に書いてもらったことはないですよ。もちろん絵も。
福井:はははは。ときどき、この絵は先生のじゃなかったらどうしようって思うこともあるんですけど、それはないんですね(笑)。
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