オーディエンス:それは先生、日本の伝統芸能が得意とするところのような気がするんですけど。型があって、ちゃんと型が出来る人が、自分のものをやっていくと、すごく素敵に見えるようになるって聞いたりします。
秋山:枠組み(型)というのは言葉を超えたもので、重箱の箱を与えるようなものだと思うんです。その中で限定してものを考える。これがアイデアを出すときに重要なんです。そう考えるとモノの本質が見えてくる。100メートル走も100メートルという枠組み(型)を与えているんですよ。
茶の湯の世界も同じ。使っているお茶碗が名品かどうかは最初は分からないんです。でもその枠組み(型)の中で同じことを繰り返していく内に、徐々に分かってくる。だから枠組み(型)は重要なんです。つまり「限界(枠組み)を決めておく」ということです。
人生も生まれて死ぬという限界(枠組み)があるからこそ、人生を楽しめる。死ぬという限界(枠組み)があるからこそ焦って、生きている実感を味合わうために努力をするんです。
福井:逆にそこからパワーをもらっているわけで。
秋山:そうなんです。限り(枠組み)のあるところからパワーをもらうんです。ぼくが中国イラストレーションポスターをコレクションし、研究をしているのは、中国の文化を誰が残すかを考えたとき、世界でぼくしかできないと思ったからなんです。
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福井:日本に関してはされないのは、他にもう誰かがやっているからですか?
秋山:ぼくは日本のイラストレーションポスターの研究も行っています。日本を知らなければ中国も分からないから。比較対象ですからね。足元を知らなければいけないと思って、日本のことを調べてみたら少しずつ分かってきた。そこでまた「日本のルーツは中国にある」と気づきました。例えば日本の浮世絵をだれが評価したかと言うと、ヨーロッパの知識人達です。
つまり異国の文化の美を重要視するということです。朝鮮の文化、民芸に深い理解を寄せていた柳宗悦は、1919年の3・1独立運動に対する日本の侵略と暴虐行為に対し、「読売新聞」に論文「朝鮮人を想う」を発表して、日本の罪行を告発しました。
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