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秋山:文化を重要視することで、そういう大切な発言が生まれるというのが重要で、すごいアイデアだと思うんです。そういったことをぼくらはやらなきゃいけない。日本は現代中国を以前かなり批判していたが、ぼくはそうは思っていなかった。そうしないと、日本も分からなければぼく自身のことも分からないからです。


福井:そうですね。でも、未だにいいようには見せてないように思いますけど。


秋山:日本の考え方の根本ってほとんど中国から来ています。それをどうやって否定するんですか?仏教儒教もそう。道徳観の大事なところって中国から来てるんです。でも現代の中国ではそれは失われています。中国の人たちが日本のおばさんたちのゴミ出しをみると、すごく感動するんです。


福井:そうなんですか?


秋山:そう。ぼくのところに中国から来客が来ました。彼らがホテルまでの道が分からず道を尋ねると、日本の八百屋のおばさんは自分の仕事をほっぽりだして、ホテルまで案内してくれた。こういったことは中国にはほとんどないんです。

例えば、北京の精華大学の先生たちがぼくに話した話しに、試合終了後の北京のスタジアムで日本人がいた場所はとても綺麗になっていたが、中国人がいた場所はゴミだらけだった。これを見て北京の清華大学の先生たちは、がっくりして言ってました。日本ではゴミを持ち帰って当然、でも中国の人たちは平気で捨てて行く。

これが文化の違いですよね。根本的な違いだと思いますね。ゴミを出すときも日本のおばさんたちのレベルの高さを知ることができます。

福井:村八分という文化があるからじゃないですか?


秋山:それはちょっと違います。ものごとを良くしようとする文化があるんです。ぼくの各クラスの総合計をすると約150人生徒がいて、コンピュータに自分の作品のデータをいれていくんですけど、ある日その半年間分のデータを消した人間がいたんです。そのときぼくの助手が、「CDRに焼いて提出させるようにしましょうか、そうすれば同じ事故はおこらなくなりますよ。」と言いました。

ぼくは一カ月考えたんです。それで閃いたアイデアは、「今までと同じやり方で提出させよう」ということです。これまでの10年間、そのやり方で一度も事故なんて起こったことはなかった。そんな過ちは誰も犯さなかった。こういった合理的でモラルのあるやり方を一夜にして壊すことはない。このやり方でもう一度やりましょうとみんなに宣言したんです。もしもう一度事故がおこってしまったら、CDRで提出させることにしましょうと。

そうしたら、助手も「その方が良いですね」って言ってくれたんです。つまり、みんなでやろうということが、みんなのモラルなんです。ただし一線を越えてしまう人間がでたら、何十年も続いた文化をやめなければいけない。

たとえば、何千年とみんなが楽しみ、そして癒されたり純化されるような、ものすごく美しい風景のビューポイントがあったとします。よく観光地に見られるような景観を壊す柵がないため、ここに訪れる人たちは喜んでいました。しかし人命のためという理由で柵を作れという命令が出ました。それと同じことです。


福井:落ちない事を重用視したアイデアですよね。最低ですね。


秋山:最低ですよ。どっちが大事か。命が大事なのか、風景が大事なのか。まあ、どっちも大事ですが。


福井:そうですよね。でも、落ちないようにするアイデアが大事であって、柵が大事なわけではないですよね。

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