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其の五:みんな水戸黄門が好き?

秋山:ええ、ええ!つまりこういうことを閃いて、さらにまた考えるんですね。どんどんどんどん。これはちょっと考えすぎるんですけれど(笑)、ここにまたありますよ。「エイデンシュタインの錯視」ここ面白いんですよ。こう見てください。お尻のような、肛門のようなマークがありますね。こっちにも円のようなマークがある。二つあって、どっちが魅力的に見えるか?こっちなんですよ。上の肛門みたいなマークのほうが魅力的に見える(笑)全員がこっちがいいと言うんです。水戸黄門のほうがいいに決まっている。

福井:あははは(笑)

秋山:なぜそうなのかを考えませんか?例えば、女性でもしゃべってしゃべって、全部しゃべってしまう人はモテない。その時は彼氏に対して、おしとやかに魅せながら、たおやかで細い前髪がさらっとかぶって、一瞬だけ顔が見えなくなる。或る時「いやね」なんて言いながらさらっと揺れて・・・。このカーテンのようなものも男たちの気を惹くんだと。これはね、鴨長明が言うよりも、ぼくの言っているほうが正確なんです。そして僕たちの心を動かすこの(図形)ですよ。このね、白と黒の図と地の関係ね。やっぱり上だなって。或いはそういうことを重ねて選んでいって、「優勝」するかたちにいい言葉を探していって、名作を創るんです。

福井:先生のイラストって、まさにこっちじゃないですか。肛門のこっち。

秋山: うん、そうそう!そうなんです。で、それを言わないんですよ(笑)

福井:もうこれ以上省けないところまで省いておられる。

秋山:で、それが答えだと僕は思っているんですよ。その組み合わせ。このアイデアを僕たちは・・・例えばね、さっきの携帯電話の例がありましたね。この枠組みの中に二つの要素を踏まえて考えてみましょう。(携帯を取り出して)これ、携帯ね!この違いを僕たちはいつも見ているんです。この中から何が消えたかというと、ボタンが消えた。このボタンは、重要な決定的なタイプライターのような趣向を持っていた。しかし、僕たちはもうこんなものいらないよって。打つこともなくなるし、最後は言葉で入力できるようになる。「あなた好き、嫌い、なんとかよ」って。ところがまだそこまでいくためには、相当な組み合わせを作っていかなければならない。何十年前に「あ、言葉で文字が打てるんだ」って気付いてすぐにそういうソフトを買って、やったんですよ。

福井:はい。

秋山:でもやっぱりダメでした。何が問題かというと、幾つか問題があって、人間には「こうだね」とか「それからさあ」なんていう意味のない言葉を発しながら、脳が次の指示をしていく。この意味のない言葉を、マシンが意味のない言葉と自覚するためには相当な努力がいるから、まだまだ成立は難しい。僕が生きている間に、それが生まれればいいんですけれど。僕たちはこの見えない形を、どこにも三角形はないけれど三角形は「ある」というふうに想像していく。これをコンピュータがきちんと取り上げて出来るようになれば言葉の読み取りは解決が付く。それが出来れば大ヒットです。僕は今考えただけで、やりませんけど(笑)これさえ考えれば、あと数年で誰かが答えを出してくれるだろう。そういう時に、自分のジャンルを超えた面白い人と話をすることによって脳はどんどん閃いてくる。今日の会話もきっとそうなってくるでしょう。

福井:ええ。あの、改めて・・・先生と出会いの最初のきっかけというのが、今の「ヒラメク」という本を書いているなかで、どうしてもイラストが欲しいと。僕はイラスト年鑑という本を購入して、一番最初のページに先生のイラストがあって、それ以外(のイラスト)からは、何もアイデアということを感じなかったんですよね。先生の絵しかない!と。 ただこれだけの大先生に僕がイラストをお願いするのも・・・と思って、実際、ここに(秋山孝のアトリエ)にお邪魔するだけでも凄いことだなと思ったんですけれど、先生から言われたのが、お訪ねした時に先生から「なぜ君がここに来たのかわかるよ」と言われ、何が起こったんだと驚きました。(笑)

秋山:あはは!うんうん(笑)

福井:どういった仕事をするのかというお話をする前に、僕はこういう本を書いていますという話をしただけで、先生は「それを実現するのは僕しかいない」と。結局、僕がその時に感じた、つまり先生のイラストから感じたのは、このイラストを描くにはアイデアが無いと絶対に無理だと。またもう一度この話は後からしたいと思っているんですが、この先生だったら、僕が言っているアイデアという話について、もしかしたら語っていただけるんじゃないかと。

秋山:うんうんうん!

福井:そういう最初の「イラスト年鑑」からのきっかけだったんですけれど。もうそこから4年が経ちまして。

秋山:経ちましたね!

福井:4年近く経って、そのなかで一緒に旅行に行っていただいたりとか・・・

秋山:それでね、僕はこういうことをしたくてしょうがなかったんです。いろんな人にこういう話をしたわけ。でも誰も相手にしてもらえなかった。(爆笑)そして相手をしてくれたのは、福井さん一人だけだったんです(笑)

福井:あははは!

秋山:僕たちの脳は・・・こういうことを考えている人はめったにいないんです。いても出会うことはめったにない。めったにないことが奇跡的な出会いこそ重要なんです。アイデアとアイデアのぶつかりだから。そうするとまたそれから深く答えが導き出されるから、僕はそれをやりたかったんです。とことんね。次はそれを熟成させなきゃいけないというのがあって、こう過ぎていくうちに、徐々に新しいアイデアが浮かんできて、そういう話ができるんだなあと。今日もそういう感じがしています。嬉しいですね。

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